小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

反抗の凱歌

もう何年も前の事だ。
あの施設から逃げて、拾われたのは。
「今日から兄妹だ」と呼ばれたものも、「顔似てないね」と言われたのも、「目の色が違う」と馬鹿にされたことも。
なんて懐かしい記憶だろう。
既に消え去ってしまった事なのに。
思い出してしまうのは何故なのだろう。
伸ばした手は空を掴む。
余韻は虚しさだけ。
でも、彼は戦争好きな傭兵に殺された。
彼女と彼は逃げ切れずに、思いを残して死んでしまった。
彼は一人の人格を失って敵軍に捕まってしまった。
彼は大きな傷を抱えて閉じこもってしまった。
彼女は痛みを抱えながらも勇気と強さを持ち、未来を見据えた。
彼女は深い悲しみにの上に施設を抜け出した。
彼は「まだ終わっていない」と言い切って固い真実を心に結んだ。
彼は病気を持ちながらもこの戦いを終わらせると言っていた。
彼は…、いなくなってしまったけれど、きっと何処かで生きていると信じる。
其々が違う考えを持った。
其々が道を選んだ。
でも、私は?
何もできなかった。
守れなかった。
それでも、
誰かを守りたい、世界を変えたいと望んだ。
世界の一部として。
それでも、戦った相手が悪かったのだろうか。


「何を根拠に紛争根絶を掲げる!!」
ある兵士が叫んだ。
「この悲しい世界を変えたいからだ!!」
私も必死になって叫んだ。
「その悲しい世界を作り上げたのはお前達だろうに!!」
「なら、この24世紀で世界の科学が発達しているのに尚も、何故人は戦いをやめない!?」
「それを見出すために戦っている!!」
「戦うだけの人生なの!?」
「君たちだって同じ考えを持っているはずだ!!」
「私もそうだった!!!」
「まだ幼い少女でも戦っているではないか!」
「でも、今はそうじゃない自分がいる!!」



何を叫んでいたのだろう。
何が変えられたのだろう。
根拠のない思考を、エゴを押し通していただけではないか?
そのたった一つの家族でさえ、一つになる事ができないこのご時世で、世界を一つにするなど、到底考えるにも馬鹿げた事だ。
でも、それでも希望を持てると言うのなら、私は、もう少しだけでも此処で。


反抗の歌を歌い続ける。