小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

Don't cry baby

腕のないあの子が友達を作ろうって言っていたのはいつ頃だっただろう。
別に僕には全然関係のない事だったけれど、いつまで経っても友達のいなかった彼が珍しいって思った。
正直できそこないで落ちこぼれ、成績優秀でもなく何も特徴のない彼だったから友達ができるなんて考えてもみなかったし、僕の頭の中にそんな事一度も通った事はない。
まあできたならそれで良いんだと思うけれど。

何年経って僕も彼も大人になった時、彼は「守護者になるんだ」と僕に笑って言っていた。
守護者って、この街を守る結構大変な仕事だって聞いた事はある。
もしかしたら死ぬかもしれないし、そもそも片腕のない彼がなれるなんて思っていなかったから心底彼を嘲笑っていた。
でも何ヶ月か後に、彼は守護者になったんだ。
まじかよ、って思った。
昔泣き虫で友達すらいなかった彼が、僕の後ろでずっと泣いていた彼が、いつの間にか僕を追い抜かして目の前に背中を向けて立っている。
この何年、何もしていなかったのは僕の方だけれど、何故だか凄く腹が立っていた。
僕がいないと何もできなかったくせに、感謝もなにもないのかよ。
こういう考えは傲慢とか言うのかな、僕の心は黒く薄汚れていた。

だから僕、あいつの大切なもの、全部壊してやったんだ。
かわいそう、かわいそう。