小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

Human

「うわあ、何ここ凄いな」
血の繋がらない双子の弟に連れられて茂みの中をその双子の兄ともう一人の妹と共に歩かされていた。
10分くらい、薄暗くて生い茂った木々の中を歩いていたら綺麗な小川のある小さな森に着いた。
「どうだ、凄いだろ」
その弟は得意げに鼻をふんと鳴らす。
私たちの様にまだ年齢の幼い子供にとってはこんな小さな森でも十分な遊び場になる事は分かっていた。
最近は大きくなって勉強勉強と急かされていた私たちにとって、少しの逃げ場にもなりそうな、心地よい空間でもあった。
「でもなんでこんな所を」
「此処を秘密基地にしようと思って」
血の繋がらない兄からの疑問にその弟は満面な笑みで答えを返せば、その兄は嬉しそうにニヤリと笑った。
「そうだな、ここを秘密基地にすれば親にだって見つかんないよな」
便利だ、と最後に一つ付け足してすぐに靴下を脱ぎ始めた。
「え、お兄ちゃん達、もしかして川にはいるつもり…」
可愛い妹は少し戸惑った様子でやんちゃ盛りの兄たちをエメラルドの綺麗な瞳で見やる。
「当たり前だのクラッカー!こんないいところ、使わなきゃ勿体無いだろ!」
そう言いながら二人は伸び盛りの小さな足を冷たい川に入れた。
二人は楽しそうに水のかけあいをしている。
何しろここ数日は夏日和で暑くなってきていて、水遊びをしたくもなっていたのは知っていた。
そしてつい一昨日、家の庭で二人が水遊びをしていたら乾かしていた洗濯物に全てかかり、そして地面に落ちた事でまた泥だらけにしたので水遊び禁止になっていた。
まあこれはこれで結果オーライなのではないのだろうか。
家で水遊びをしてまた怒られるよりかはましだと私は思ったからだ。
「おーい、リーミアとエミリアも遊ぼうぜ!」
そんな風にして名前を呼ばれた私、リーミア・フィロストは血の繋がらない妹のエミリアと一緒に、笑顔で川に入った。

平凡な日々を過ごしたかったのは皆同じで、ただただ毎日気楽に、楽しく暮らしていたかった。
そんな世界は私たちに優しくはなく、残酷に命を奪っていった。
私を引き取ってくれた家族は皆いなくなった。
どうして、この世界ではいい加減争い事をやめようとしないのだろうか。
私たちの気持ちを知る事もなく、勝手に戦争を初めて、勝手に命を、大切な物を奪っていった。
そんな人間に振り回されて私たちは心も体も疲れ果てていて。
大いなるゼロサムゲームは終わる事もなく、1000年も、2000年も前から人間は戦いを続けている。
誰かが楔を打ち込むことを信じて、私は、違うセカイに引きこもった。