小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

兄と弟

僕に弟が産まれた時は、「兄になるんだ」ってとても張り切っていた。
両親からも信頼されて、「弟を、葵乃を大切にするんだよ」って言われた。
僕がしっかりしなくちゃ、しっかりして、弟に兄貴らしいかっこいいところを沢山見せるんだ。
そうして一緒に仲良く育って、葵乃は僕の中で大切な宝物になっていった。
あまりに可愛くて、甘やかしたりして、少し泣き虫になっちゃったけど、それでも僕は弟が大好き。
葵乃だって、僕のことが大好きだって知ってる。
いつでも一緒にいようね、って本気で思ったことだってあるから。
過保護だってわかってても、僕はいいと思ったから。


黒い、黒かった。
弟が「黒いモノ」に攫われるかとすら思ったそれは、勢いよく葵乃を飲み込もうとした。
足が動かない、動いて、お願いだから、お願い。
「触んな!!!!!!」
動いた足を徐に動かして、黒いモノを蹴っとばそうとしたけど、それは逆に僕を飲み込もうとした。
守っていたいから、守ろうとしたから?
最後に見た葵乃は涙と鼻水で顔がぐしゃぐしゃだった。

身体の中に住み込んだんだ、あいつ。
弟を狙ってるって、すぐにわかった。
弟に近づく度に身体の中にいるモノがざわざわする。
殺気を孕んで、人を食べたくなる衝動と、それが沢山自分の中を支配していった。
仕方ないから、守るために組織に入った。
でも後ろで笑う弟は何故だかいつも黒く汚れて傷んだ。
気づけよ、あの弟が近づいた時から可笑しかっただろう。
それでもまだ、気づかないふりをしたかったから。