My Home!!
最悪だ。
また逃げられた。
「ねえ…、ニトラ見なかった?」
「はあ?…あのハゲ、なた逃げたのか」
「そう…」
銃の整備やら八雲の戦闘機の整備だとか。
皆大変なのにまたあいつは逃げた。
何故だか嗤って逃げるあいつの顔が目に浮かぶ。
「見つけたらなんでも何してもいいから捕まえといて…」
「ん。なゆも大変だな…。連帯責任だから、上に怒られるもんな」
「ほんと。全くわかってくれないの…」
一番楽してるのはニトラだし、ニトラが怒られなきゃいけないのに、私が優先的に怒られる。
理不尽な世界だなあと、つくづく思う。
探しているうちに段々暗くなってきた。
もうそろそろ諦めて帰ろうとした時。
「あ…いた」
月夜に輝く少し濁った金髪を見つけた。
珍しく髪をほどいている。
近くに行って呼び止めようとした時、ニトラが誰かと喋ってる声が聞こえた。
「Eine Sache, die ich nur hoffe.」
「(?ドイツ語?)」
何を言っているのかはわからなかった。ただドイツ語だって事はわかる。
「Hoffen Sie die Symbolik möge.」
始めて、ニトラが綺麗な声だなと思った。
そして始めてドイツ人だって知った。
「…ごめん…まだそっちには逝けない…。だけど、皆の道しるべになるから。まだ、戦争が終わるまで逝けないから。…此処だけが、私の居場所だから…」
よくわからないけど、もしかしたら、ニトラが一番苦労してるのかもしれない。
だけど、なぜだろう。
顔に迷いがなかったのは。
そういえば昔聞いたことがあるかもしれない。
ニトラの本名。
確かドイツのどっかのお姫様…だったような、そんな気がする。
うん…するだけだ。