御祭り
「やあこんばんわ神蘭!」
「こんばんわ藏、そしてさようなら」
「さよならはいらないよ?神蘭」
ああ、最高に気持ち悪い。別に私は此奴のことが好きなわけでもないし、好きにならせる様な事をしたわけでもないのに、相変わらず此奴は私に突っかかってくる。
面倒な奴。
「ああ、今日の格好も最高に可愛いね!神蘭!!」
「昨日と何も変わらないわよ!!」
今日は私の死んだ父が経営していた神社の御祭りのため、少しばかり着飾っていたが普段と少ししか変わりない。此奴、こんな性格じゃなくてもの静かだったら少しは好いてやっていたかもしれないが、なにしろ性格は最高に気持ち悪いため少しも好けない。
最初会った時、少しでも「かっこいい」と思ってしまった私も思いを返せ。
頭の中で悶々と考えていた私に救世主(少し言い過ぎた)の声が響く。
「藏は相変わらずねぇ、気持ち悪い」
「加古!!」
しかも、木の上から。
彼女はふわりと飛び、地面に着地した。「こんばんわ」と言って私と藏に笑いかけた。加古は美人で、おまけに性格も良い。私とは全くを持って正反対の少女だ。
いつも悪態をついてしまう私は少々彼女に憧れていた。
「加古、それは俺に失礼じゃないか?」
「そう?でも別に悲しんでいる様子は伺えないわよ?」
「ちっ」
初めて藏が悪態をついたところを見た。意外に怖い。今度から此奴を怒らす事を控えようか。あ、でも私には怒れないのか。此奴は私の事好きだしね。
「さ、お祭りを始めようか。皆どうせ来ているんでしょ?」
私は加古に訊いた。加古はにっこり笑顔で「うん。私がなんとか呼び寄せておいたからね。今年も大繁盛間違いなしさ」と答えてくれた。本当にありがたい。
「さああ仕事だああ」
私は伸びをしながら自分の立ち位置についた。
「今日は神原神社祭りだよ!妖怪、人間、動物諸々、皆さん楽しんで下さいや」