老齢楽観少女
私はいつからか、年を取らない体になってしまっていた。
それはいつの事だったかは忘れたけど、取り敢えずとても不便だ。
何故なら、私は死ねない。
人は若い頃は皆早死には嫌だ、などと言う。
けどこの歳までいくとわけが違う。
自分から、早死にしたかったなどと思ってしまうのである。
死ねないと、今まで一緒にいた大切な人を失う事が多すぎる。
忘れたい事も忘れられない。
いや、忘れられる事はあるっちゃあるが。
そんな感じで、長生きすると何かと不便は多い。
長生きする人はそう多くないが、100歳以上いく人は私の周りに沢山いる。
だから、私は何故かこう思ってしまう。
「長生きもそんなに悪い事ではない」と。
その答えは簡単だ。
失うものも多いが、生まれてくるものもまた多い。
忘れる事も多いが、また新しく覚えるものも多い。
そんな当たり前の事が、私にとってはとても新鮮で、何より愛おしい。
いつまでもこのままでいたい。
この子たちの側からは離れたくない。
でも、見送りも必要かな。
私の事は覚えていなくても良いよ。
その代わり、今目の前にある大切な人、物を覚えていてほしい。
そうして、私という人ができあがっていく。
忘れ去られるのは悲しいが、そこまで悪くはないと思う。
何より、出会って別れるというのがこの世界の掟。
ならこの世界に生まれてきた定め、私はしっかりと果たそうではないか。
この世界に生まれて見つけた多くの物は、私にとっての生き甲斐。
私が今生きている、たった一つの理由なのだから。
「さ、いってらっしゃい。また会おうなんて言葉は必要ないよ。出会って別れるのが、私たち人間の掟なのだからね」