小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

現実否定少年

「ねぇ、貴方はあっちの皆がいる方へ行かないの?」

とても綺麗な顔立ちの少女が、俺に話しかけてきた。

「…俺の左目の傷見て怖がって、誰も遊んでくれないんだ。お前もあっちに行った方が、身のためだぜ…」

俺は突き放す様な言い方をした。

その方が彼女にとって、一番良い事。

俺のせいで、彼女に友達ができなくなったら、どうする。

「あら、だったら私は何処にも行かないわ。貴方と一緒にいてあげる!」

「…は?」

彼女は満面の笑みで俺に言ってきた。

俺は今日一番の間抜けな声を出す。

「それに私、貴方と友達になりたいもの」

「え、だから…」

彼女は自信満々な顔で俺に淡々と話す。

俺は焦りながら、彼女の言葉を振り切ろうとする。

でも、そんな考えは一気に吹き飛ばされた。

「それに私が一緒にいれば、貴方もその自由な足で、何処にだっていけるわ」

彼女の言葉で、今まで俺が作っていた彼らを隔てる壁が全て、吹き飛んだ。

「…あ、ありがとう…」

涙が次々に新しいものへと変わっていく。

「ふふ、男の子が泣くのは格好悪いわ。これからは簡単には泣かないようにね」

彼女は俺を見て微笑む。

俺は涙を拭い取り、彼女を見て、これまでにない笑顔でこう言った。

「俺の名は豊穣イル。イルって呼んでくれよな」

自己紹介。

先ずは自己紹介からする事が大切だって、先生から習った覚えが。

あんまり覚えてないけど。

「…私は城ヶ崎祈よ。よろしくね、イル!」

そうして彼女も満面な笑顔で笑ってくれた。

明日がとても楽しみになった。

友達ができて、とても嬉しかった。

でもそんな幸せ、長く続くはずがなかったんだ。

そんな事、わかっていた癖に。

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「イル兄!!!!どうせ家にいるんでしょ!?勝手に入るよ!?!?」

…あぁ、またあいつか…。

なんで勝手に入ってこれんだよ…。

「っるせぇな…。勝手に人の家に入ってくんじゃねぇよ…」

保護者面した奴なんか嫌いだ。

良い子ぶって、内心では結構卑劣な事考えてそう。

「あああああああまた寝てえええええええ!!!!!!」

バァン!という音の後に少女の声が聞こえる。

両親がいなくなった後は毎日の様に此奴が来るようになった。

面倒で、昔はよく俺の後ろに隠れていた、彼奴。

「だから思いっきり部屋のドア開けんじゃねぇって!!!うっせんだよ!!!星羅!!!!!」

そしてまた喧嘩がはじまる。

「イル兄が起きないからでしょ!?」

「だからってお前が来る必要ねぇだろ!!」

あぁ…また面倒なことに…。

早く終わらせて此奴の持って来た朝飯喰うか…。

そんな事を考えていた俺。

今は既に『現実否定』をして、なんとか生きている。