小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

Reverse

空は青く澄み渡り、どこまでも行き渡っている。
夏の頃より遠く感じる空を眺めながら散歩できる日がくるなんて、夢にも思わなかった。
寒がりで酷い冷え性の私は外に出る事がずっと憂鬱で、家にひきこもっている事が毎日だったからとても嬉しい出来事。
少し軽くなった症状はいつまた元に戻るかはわからないから、今のうちに出掛けてしまおうと思った事が切っ掛けだった。
たいした事ない理由だけど、散歩に出る事自体が私にも、唯一の肉親である兄にも大きな出来事で。
『大丈夫なの、一応マフラー持って行ったら?』
そう兄に急かされて取り敢えず持ってきたマフラーを小さく小洒落たショルダーバッグに収める。
ずっと付けていたマフラーだから愛着があった。
手放す事はしないだろうけども、やはり付けていないと少し首周りが変な感じがする。
肌寒さを覚えた体を暖める為に、小走りで人の少ない街路を行く。
誰かと一緒に歩く事が出来たのならば、この道を歩いてくれる人がいたら良いのに。
そう心の中で願った言葉は、冷たい秋風とともに消え去って行った。
自分の記憶の中にある、あの仲の良かった男の子に、もう一度会えるのなら。
寒がりだった私とずっと一緒にいてくれたあの、黒髪の。


それ以上は思い出せないけど、ありがとう。
私は今でも元気に生きてるよ。