小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

それは願いのままに

「ね、最近ミラージュって何かあったの?」

隣にいる赤髪に話しかける。

僕が急にそんなこと言ったのが悪かったか、お酒を口に含んでいた彼は咽せ始めた。

空っぽの謝罪を言うと、彼は少し引き気味に「え、なんでそんなこと聞くんだよ…」と答えた。

「なんかさ、最近愚痴るの減ったよね、って思って…。あとあまり僕を呼ばなくなったっていうのもある」

僕が咽せていた彼の背中を擦りながら彼に言う。

「ああ…。悪いな…少しいろいろあったんだ…」

彼は少し遠くのものを見つめる様な顔つきで僕の言葉に返答した。

ああ、だからか。少し羨ましい。

自分とはまた違う、不幸な彼の境遇を羨ましく思う。

「……彼とは上手くいってるの?」

ぼそりと呟く。

今日の彼はよく咽せるらしく、またげほげほ咳き込んだ。

何に動揺しているのかはわからないが、聞かないことにしようか。

彼の方へ向けば嫌悪をあらわにした表情をしていたので、なんとなく察してしまう。

そしてまたいつもの様に愚痴る。

ああ、またいろいろストレスが溜まったのかな…なんてことを考えていたがそうではないらしい。

嫌悪感はあるが、何処か、彼に対する愚痴は嫌いな要素を含んでいない。

反抗期の子ども育てているお父さんの愚痴みたいだ。いや、聞いたことないけど、そんな気がする。

もうそろそろ、言ってあげた方がいいのかな。

 

 

「ねえ、もうそういう風に他の人と壁作るのやめたら?」

隣にいる彼女の言葉の思考が完全停止の音を告げる。

顔をそっちに向ければ、何故か切なげな表情をする彼女。

「…な、なんのことだ…?」

動揺しているのを察してもらいたくはないが、こういう時に限って自分の表情を隠せない不器用さに苛立つ。

彼女は言葉を続けたる。

「……もういいんじゃない?自分の心に嘘つくなって言ったの、誰ですかね?」

「…誰だろうな…」

彼女の言葉に声が震える。

でもバレたくない。自分のこういうところを見せたくない。

それでも彼女は優しく、冷たい手で俺の頭を撫でながら、「もういいんだよ…だって、沢山友達できたもんね?」と声をかけてくれた。

目に雫がたまっては、頬に流れて落ちて行く。

肩が震えてどうしようもない。

 

いろいろ、考えた。ずっと、悩んでいた。

誰かにこの気持ちを知ってほしくて、でも知られたくなくて。

皆持ってることは知っている。

皆が通る道だってことも知ってる。

それでも、自分は。

 

何もわかっていないただの子どもだったのだろうか。

「…俺を大切に思ってくれる人がいるんだ…。初めてだったから、不安で、怖くて…。だけど彼奴に嫌われたくなかった…。それでも、自分の弱いところを見られたくなくて…。おかしいよな…。人間じゃないってことを知ったら、嫌われるかもしれない…。でも…でも…」

大切に思ってくれてる人はそれでも、受け入れてくれて。

「ちゃんと、最後まで」一緒にいてくれることを約束した。

その目に迷いはなくて。

いろいろ我慢はさせるかもしれない。途中で自分の身体が壊れるかもしれない。

それでも。

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒にいることを望んだ彼は、あの後どうなったのかは知ったこっちゃないよ。…でも、僕は、彼に沢山、励まされたなあ。ありがとう。ありがとう。ずっとお幸せに」