化け物少女と化け物少年
「…すげー退屈…」
緑の少年がイスに座ってうめいた。
「しょうがないよ、だって閉じ込められてんだもん」
その少年の言葉に白い少女が応える。
二人とも”普通の姿をしていれば”人間に見えるのだが、”普通の姿”ではないためこうして村人に襲われて監禁されていた。
もう何日間も食事が出ていない。
まあ出たとしてもあるのは腐ったパンと冷えたスープなのかスープじゃないのかわからない変色した液体なので、出ない方がまだましだった。
「ま、取り敢えずここから出ようよ。そうすれば晴れて自由の身なんだよ?僕たち」
白い少女が提案した。
緑の少年は呆れたように「どうせまた捕まるだろ」と諦めた答えを返した。
ふむ、と喉を鳴らす少女に今度は少年が提案する。
「ならお前を練習台にするっていう暇つぶしもあんだけど」
「死ぬ!!!!!絶対わざと腹とか首とか当てるから却下!!!!!あんたみたいに自己修正機能なんて持ってないんだからね!?僕は!!」
少女は少年の提案に慌てて応える。
少年はちっ、と舌打ちをした。
少女は少女独特の白い髪の毛を揺らして「ほっ…」と溜め息を吐いた。
外から声が聞こえる。
『おい…この中にあの”化け物”がいるんだな?』
低い50代過ぎの男の声。
何か銃を持っているようだ。彼女たちに気付かれない程度の声で仲間に喋っている。
そんな事しても少年には無意味なのだが。
『はい…ついこの間、彼らが二人で会話しているところを後ろから網で捕らえました』
もう一人、まだ若い20代くらいの男の声が聞こえた。
「あはは、僕たちを殺しにきたらしいね〜」
暢気な声が聞こえる。白い少女はいつでも暢気だった。
危ないときでも暢気に受け流し、冷静に終らせる、そんな奴だった。
「そうだなー…ま、あとはよろしくちょ」
「え?何々?僕に全部やらせる気?相手は銃火器持ってるのよ?」
「まあま、頑張れ」
緑の少年はそう言って、横になってしまった。
少女の情けない声が聞こえてくるが、無視。
そしてあっという間に男たちが中に入って銃を向けた。
そして銃の打つ嫌な音が_______聞こえて来なかった。
ただ聞こえるのは鈍く、乾いた音と男たちの悲痛な叫び声。
それと、液体の流れる独特な気持ち悪い音。
早く終れ、と心の中で少年は願った。
やがて何も聞こえて来なくなった。
少年が立ち上がると周りは赤く染まっていて、白い少女が目立っていた。
「ほら、扉空いてるしさ、外に行こう」
少女は何事もなかったように少年に手を差し伸べる。
少年は少女が伸ばした赤く染まった手を払いのけさっさと出て行く。
少女の口から「全く、素直じゃないんだから〜」という気色悪い声が出た。
「気持ち悪いさっさと行くぞ、ヴィオラ」
少年は嫌々ながら少女に声をかけると、少女は「ハイド待って!お腹空いたよ僕!」と叫んだ。
そんな二人があるサーカスに入るのはもっと後の話し。