小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

Ti piaccio?

どういう意味かわからないけど、急に彼は酒を飲みだす。

酒に弱い彼が自ら酒を飲むなんて何かあったのだろうか、なんて思う。

酒を飲むといつものあのプライドの高い彼は何処に行くんだろう、なんて思う。

一緒にいても飲まない癖に、都合のいい奴だなんて思う。

「あー…まじやってらんね…」

彼はワイングラスを傾けながら呟く。

本当に何があったんだ。

「…何があったのよ…、まじで…」

取り敢えずいちいち絡まれると面倒なんで、こっちから問いかける。

今問いかけなければまた普段はしない説教が始まると予測したからだ。

本当に酒に弱い奴は面倒だとつくづく思う。

「あいつのおかげで全然仕事が進まねえんだよ…はあ…。ロウをさっさとアップデートしようとしてるのに…」

既にぐでぐでに酔った彼は応える。

ああ…あいつとはついこの前「仕事仲間(?)に口説かれた」と騒いでいた人のことか。

結局は彼も物好きなわけで、散々喚いていたのに気付けばいつのまにか付き合っている。

いやよいやよも好きのうちってやつですか。

いつまでたっても彼氏のできない僕はどうすればいいのやら。

いや酒も飲めない未成年(精神的な問題で)私と一緒に酒を飲んでいる彼もどうかと思うのだが。

「…なんだかんだ言って、あんたもその人のこと好きだよね〜」

皮肉をこめて彼にいうと、彼はこっちを向いて「そうだな…」と珍しく素直に認めた。

酒とはつくづく恐ろしいものだと思う。

こうプライドの高い彼の本性もさらりと暴いてしまうのだから。

リア充って言葉知ってる??ディーノ」

「次その名前で呼んだらお前ぶっ殺すぞ、ヴィオラ

「ううー怖い怖い。どうやってこの僕を殺すのやら…」

まだ一応脳みそにまでは酒は達していないらしい。

受け答えはまだしっかりしている。

「…で、なんで僕と酒なんか飲もうと思ったのさ」

僕は今だに聞いたことのない疑問を隣のやつに聞いた。

彼は虚ろな目をこちらに向けたまま、「愚痴を素直に聞いてくれるやつと言えばお前だからさ…。しかもお前愚痴聞くの好きだろ…」と応えた。

ふむ、よくまあご存知で。

「そう…そうですか…」

まあ異形の姿ではない今、彼は僕を人間としか思っていないのだろう。

本当の姿にを見せたらどうなるのだろう、と嗤いが起きる。

くつくつと喉をならすと彼は、「なんだよ」と言った。

なんでもないよ、と僕は笑って応える。

こんなマイナス思考しかない僕に構ってくるミラージュが僕は大嫌いなのだが。

でもまあ聞いてみることにしようかな、とか思う。

「…ねえミラージュ」

「あ?」

「…Ti piaccio?」

 

 

 

そのあと思い切り殴られた僕なんだけど、多分殴ってくるってことは赤い髪をした彼は僕のこと嫌いではないのだろうと思う。

いいんじゃないかな、たまにはああいう奴と酒を飲む(私は飲まない)機会を作っても。

自分自身もあいつのことも大嫌いな僕だけど、どっちも好きになれる気がする。

…するだけなんだ。