過去
「ねえ、お母さん!」
「なあに?ヴィオラ」
「あのね!さっきお花の冠作ってきたの!」
「凄いじゃない!誰に教えてもらったの?」
「お向かいのおばあちゃん!」
「良かったわねえ」
もう、何年も前のお話し。
まるでおとぎ話のようね。
貴方がこの世界を見る頃には、もう私はこの世にいない。
でも、貴方の記憶の中で生き続ける存在になる。
でも、この世界は綺麗で、美しい。
人も、自然も、動物も。
そう、少し汚れている所もあるかもしれない。
それも、きっと受け入れられる。
貴方なら出来る。
大丈夫。
私がいるもの。
「…またあの夢…」
黒髪の綺麗な女の人。
美しく、そして、儚い。
何故なのだろう。
この夢を見るたびに、一生知ることのないであろう涙が。
こみ上げてきて抑え切れない。