恋をした 2
「え!なんであんな子好きになったの!?だって、あの子、よく悪戯仕掛けてくるじゃない!!」
教室内で1人の女の子がキーキー声を上げた。
多分私にまで聞こえるように、わざと声を大きくしたのだろう。
「知ってるよ。でも、好きになったんだから、しょうがないじゃないか」
彼はあっさりと、そしてさっぱりと言った。
あまり大きくない声だけど、こっちにまで聞こえてないと思った?
残念だけど、私耳だけはやけに良いのよね、全部聞こえてる。
少し残念。
「しかも彼女、まるで老人のような白髪を持ってるじゃない!気持ち悪い!」
「それ以上彼女の悪口言うと、良い加減怒るよ」
彼はさっきよりも低い声音で言う。
大丈夫、あいにくだけど悪口には慣れてるのよね。
「…彼奴の何処を気に入ったんだ…?」
もう一人の男の子が彼に尋ねた。
彼はニッコリ笑顔で、「優しいところだよ」と言う。
…彼に優しくした覚えはないのだが。
記憶を捻らせる。
名前を覚えていない彼と話した事あっただろうか。
まぁなくても、何かきっかけだけを与えてしまった可能性はそう低くはないはず。
なら何処で彼にきっかけを与えてしまったのだろう。
自分の記憶を散々捻られたところで、多分何も出て来ないだろう。
人より物覚え悪いしね。
「それと、オッドアイが好きかも」
「…は?」
彼の発言に思わずアホな声が出てしまった。
あ、いけないと思い、さっさと教室から自分が今まで読んでいた分厚いハードカバーの本を持って出て行った。
きっと教室は静まり返っただろうね。
だって、変な声を聞いてしまったわけだし。
"Ой, наихудший ”(ああ、最悪)
誰にも知られずに、そう呟いた。