小説と独り言

趣味で書いているオリジナルキャラの小説と、なんか愚痴ってます

メモリアル

「は?写真なんて撮る必要あるの?」

昔の私は結構酷い者だった。

「良いから良いから!写真っていうもんはな、結構後から大事な物になってくんだよ」

数十年も前、私のパートナーであったパイロットが写真を撮ろうなんて言い出した。

別に写真なんて興味もなかったし、撮ってもあまり良い物ではなかった。

「大事なもんになるって…、そんな紙切れ一枚持ってなくても変わらないでしょ…」

そう。

一枚の写真なんて、持ってたって何も変わらない。

どうせいつかは失くす物だ。

「まぁまぁ!一応持っておけよ!さ、並べ並べ!」

彼が強引(強制)私を押すものだから、仕方ないと思って渋々一緒に写真を撮った。

「ヤエー!撮っても良いぞー!」

ヤエという戦況オペレーターにカメラを持たせ、二人の写真を撮ってもらった。

その30分後に焼かれた写真を一枚貰った。

取り敢えず、自室に飾った。

その時は別になんでもない、一枚の薄っぺらい記憶でしかなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

数十年後、新しいパートナーが来た。

彼女は昔の無愛想な私にそっくりで、ついつい笑ってしまう程だった。

「ね、なゆ。写真撮ろうか!」

私は相変わらずの口調でなゆに話しかけた。

「はい?写真?なんで」

おーう、やっぱり私だなぁ。

同じ様な事、私も言ったなぁ。

「良いから良いから!写真って結構大事な物なのよ?」

なゆは興味なさそうに私の話しを聞いている。

「だってそんな薄っぺらいにデータに意味なんてないでしょ…」

「良いから撮るー!なゆに断る権利なんてあるか」

「酷くない?ニトラ…」

渋々と私に押されて写真を撮るなゆ。

現在の戦況オペレーターに写真を撮ってもらい、焼きあがった写真をもらった。

その写真を写真立てに入れ、前世のパートナーの写真の隣に飾った。

こうして見ると、私の棚って結構華やかだ。

前世のパートナーに貰った小物や、艦長や戦況オペレーター、私の弟子からなどの贈り物が沢山飾ってあった。

「気付かないうちに結構増えたな…」

自分の大切な記憶が飾ってある棚をまじまじと見る。

色々飾ってあるが、一番よく目に入るのが、前世のパートナーと撮った写真だった。

少し、目頭が熱くなる。

でもそんな目から出た雫を洋服の裾で拭い取り、顔を上げる。

こんな所で泣いてはいけない。

もう泣かないと決めた。

過去を振り返らないと決めた。

未来の為に生きると決めた。

未来の為に戦うと決めた。

大切な人を失くさない為に。

もう、悲しみを連鎖させない為に。

この世界から戦争を断ち切る。

それが私たちの役目。

…あぁ、今となってはいない愛おしい人。

彼には色々な事を教えて貰った。

仲間の大切さ、戦う事の痛み、独りではない喜びを。

「私の方が長く生きているのに、彼にはお世話になったなぁ」

今度、手紙を書いてみようかな。

きっとギクシャクした内容になるだろうけど、関係ない。

彼にとってはきっと大切な物になるだろう。

 「クリア、もう少しでそっちに行くね」

この戦いが終ったら、貴方の元へいくよ。

だから、その時まで、さようなら