化け物の願いと祈り
あの日、生まれた私は人間なのか悪魔なのかメデューサなのかわからなくなった。
悪魔に憑依された父は私を人間として育て、メデューサの母は私を人間として育ててくれた。
お隣さんは私を見ては虚しい声で、「可哀想に」と言った。
そういえば「いつのまにか」親がいなくなってた。
その時くらいから「悪魔」がちらちら心を揺らした。
目が痛くて、耳が鳴って、口を閉ざして。
心はまるで氷の様に固まった。
さみしいな。
トモダチは私を「化け物」と呼んだ。
髪の毛引っ張って、目を隠して、耳元で、大きな声で。
いつのまにか耳も氷の様に冷たくなった。
いつの日かお隣さんが言った「可哀想」がわかるようになった。
怖い。
赤く腫れ上がった目は光を映さない。
そういえば、いつからか左目が緑色だ。
私の目は元から灰色だったはずなのに。
お母さんの綺麗な緑色の目に憧れた。
お父さんの綺麗な雪の魔法に憧れた。
いつからか私の片目は緑色になって。
いつからか私は雪の魔法が出せて。
…あれは魔法なんかじゃない。
悪魔に取り憑かれた時に使えるようになったって聞いた。
そうだ。
思い出した。
私の『中』にいる奴が、殺した。
忘れてた。
此奴は、私が生きるための。
「…お父さん…」